2022年10月10日
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第23回新潟水俣環境賞作文コンクール優秀賞受賞作品の全文を掲載します!
(写真提供:新潟水俣病共闘会議)
新潟水俣病被害者の会と新潟水俣病阿賀野患者会は6月、「第23回新潟水俣環境賞作文コンクール」の受賞作品を発表し、4名の方々が優秀賞を受賞されました。同コンクールは、新潟水俣病被害者の「こんな苦しみは自分たちだけでたくさんだ。子や孫に同じ苦しみを味わわせてはならない」という切なる思いから、次代を担う子どもたちに身の回りの環境に関心をもってもらおうと、県内小・中学生を対象に毎年開催されています。作文テーマは「新潟水俣病」や「身の回りの環境」などで、今回は182人から応募がありました。なお、今回の優秀賞は下記のとおりです。
◆優秀賞を受賞された皆さんと作品テーマ
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小学校5・6年生の部
- 一つの行動が未来を変える
神田 絆さん(新発田市立住吉小学校5年) - 新潟水俣病の苦しみ
黒﨑 優奈さん(新発田市立住吉小学校5年) - 未来の自然のために
水島 蒼介さん(新発田市立住吉小学校5年)
- 一つの行動が未来を変える
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中学校の部
- 人間は……
板垣 陽菜さん(新潟大学附属新潟中学校2年)
- 人間は……
優秀賞4作文の全文は下記に掲載します!
(写真提供:新潟水俣病共闘会議)
小学校5・6年生の部
一つの行動が未来を変える
神田 絆さん(新発田市立住吉小学校5年)
春の道沿いに咲く桜、夏のきれいな海、秋の山の紅葉、冬のスキー場に向かうときの山々。ぼくは、この新潟の自然が大好きです。他の地域の人に自まんできるものだと思います。
しかし、この美しい自然も当たり前のことではなくなってしまうかもしれません。かつて、ここ新潟で、自然をこわすできごとがありました。新潟水俣病です。新潟水俣病は、有害なメチル水銀が阿賀野川に流出して起きました。これは公害の一つの水質おせんです。
生きるために必要な水、空気、食べ物、すべての原点には「自然」があります。だから自然は、人、生き物の命そのものだと言えます。その自然が、工場のよごれた水やけむりなどで失われることは、人が自ら命をけずることと同じなのではないでしょうか。そのけずられた命の表れが新潟水俣病のような公害病なのだと、ぼくは考えます。
新潟水俣病や公害について学習していく中で思いました。こんなにきれいな自然をよごしてよいのだろうか?こんなことをしたら大変なことになるかもしれない。新潟水俣病が発生した当時、そう思った人がいたにちがいありません。しかし、メチル水銀が流されました。止めようとする人がいれば、流されることはなかっただろうし、こんなにたくさんの被害者が出てしまうこともなかったでしょう。
授業で、新潟水俣病が起きたのはなぜか考えました。その中で、原因となった工場だけが悪かったのか、クラスのみんなで話し合いました。そこで分かったのは、環境よりも産業を優先した社会にも問題があったということです。当時は環境省がなかったことを聞いて、おどろきました。それだけ環境は、軽く考えられていたのでしょう。社会全体が、産業と環境の両立を考えるべきでした。
では、ここから学ぶことは何でしょう。それは、環境おせんを人ごとにしないことです。自然はすべて、つながっています。家庭排水に気を付ける、川にゴミを捨てないなど、一人一人が環境を守るためにできることを確実にやっていくことが大切です。一つ行動を起こすことが、美しい自然を守ることにつながります。
ぼくは家族で、海につりに行くことがあります。朝の海はとてもきれいで、気持ちが落ち着きます。自然は、美しさだけでなく、ぼくたちに楽しみもあたえてくれます。このような自然を失ってはいけません。
みなさん、一つ行動を起こしてください。もう過去にはもどれません。ですが、未来を変えることはできます。みんなで行動を起こしましょう。二度と新潟水俣病のような公害が起きないように。
新潟水俣病の苦しみ
黒﨑 優奈さん(新発田市立住吉小学校5年)
新潟水俣病の苦しみが症状だけだと思っていませんか?
「あんた、お金いくらもらってんだね。いいねぇ、水俣病になって。」
この言葉は私が新潟水俣病について深く考えたくなったきっかけです。新潟水俣病患者さんが受けた「差別」について考えた時の授業で聞きました。私は、そんな「差別」を思いやりの心をもち、話し合って、教え合い、広め合うことでなくしていきたいです。
新潟水俣病は手足のしびれや耳鳴り、嗅覚、聴覚、視覚、触覚、味覚の五感の機能の低下などが起こります。そしてこれらの症状を完全に治す薬はまだありません。なので、新潟水俣病が発生してから五十年以上経った今でも患者さんは症状に苦しんでいます。ですが、新潟水俣病は決して人にうつる感染症ではありません。また、子供に遺伝する遺伝病でもありません。なので、「新潟水俣病患者だから…」と言う理由で差別をするのは絶対におかしいことなのです。
新潟水俣病患者の方は辛い症状以上に辛いことがありました。それは、「差別」です。新潟水俣病を理由に仕事をクビになったり、結婚ができなかったりしたのです。これは、正しくないことを理由に差別をする「偏見」です。また、手紙で偏見や差別をされたり、仲が良かった友達からも差別をされてしまったり、どのようなことでもされた人は傷つきます。そんな様々な差別がある中、私は「あんた、お金いくらもらってんだね。いいねぇ、水俣病になって」という言葉が心に残りました。この言葉を言われた人は、ただでさえ症状に苦しんでいるのに、こんなふうに言われて、とても辛かったと思います。このようなことがあるせいで被害者の中には差別を恐れ、誰にも相談できずに困っている人がいます。だから、困っている人を増やさないために差別を完全に無くすための努力が必要なのです。
私は、差別をする人は弱い人だと思います。症状の苦しさも考えずに救済金をうらやましく思う、思いやりの心をもっていない人だと思います。差別をしている人は、症状の辛さを分かっていないので、それを理解しないと差別は残り続けてしまいます。差別をするということは、心に傷をつけるということです。心は一度傷ついたら一生治ることはありません。だから、これから心に傷がつく人がいなくなるように差別に立ち向かっていきたいです。
差別は、自分から見て「良いなぁ」とうらやましく思う「しっと心」と、相手が傷つくことを考えずに言ってしまう「無責任」から起こると思いました。だからこそ、話し合い、理解し合い、思いやりの心をもつことが差別を無くすための一番の方法だと私は考えます。みなさんも、差別が起こったら「自分が思っていることだけが真実ではないのかもしれない」ということを思い出してみて下さい。そして、私は「教え合うことは、理解すること」という考えを大切にし、ためらわずに差別を注意し、立ち向かうことができる「強い心」をもって生きていきたいです。
未来の自然のために
水島 蒼介さん(新発田市立住吉小学校5年)
ぼくは、昆虫が大好きです。小さいころから興味をもっていました。毎年、夏になると昆虫採取に行きます。オオカマキリやミヤマクワガタが採れると、とてもうれしいです。でも、最近は林や森、草むらまでなくなってきて、どんどん昆虫が減ってきました。
昨年の秋に、水生昆虫採集に行きました。しかし、池や川原は空きカンや捨てられたマスクなどのゴミで、とてもよごれていました。楽しみにしていたアメンボやヤゴ、ミズカマキリなどの昆虫はいませんでした。
「ゴミを捨てた人、マジで腹立つ!」と思いました。
虫がいないと困ることがたくさんあります。例えば、ハチがいなければ受粉ができないので、人がやらなくてはなりません。受粉できないことで絶めつしてしまう植物も出てくるかもしれません。他にも、虫がいなければ、虫をえさにしている動物たちもいなくなります。だから、自然をいちばんに考えるべきなのです。
このことは、新潟水俣病のことと似ていると感じます。新潟水俣病は工場が排出したメチル水銀から始まったこと。プランクトンから水生昆虫、水生昆虫から小さな魚、小さな魚から大きな魚、そして人へとメチル水銀が運ばれました。その間に、メチル水銀はどんどん濃くなりました。そして、発症したのが新潟水俣病です。自然をよごしたことで、人が苦しむことになりました。
今、ぼくの大好きな昆虫の世界は、よごれた自然のために苦しんでいます。そのしょうこに、タガメやゲンゴロウの数は減少しています。農薬のえいきょうや洗ざい、工場排水が原因になっているそうです。新潟水俣病の被害者の方々と同じように、虫たちが苦しんでいるように思えて、ぼくは悲しい気持ちになります。
学校の授業で、新潟水俣病がなぜ起きてしまったのか考えました。ぼくは最初、メチル水銀を流した工場が悪いと思いました。そのために水俣病になり、今も苦しんでいる人が大勢いるからです。でも、授業で考えているうちに、工場の人は、みんなの生活を楽にする製品を作るために働いていたのだと思いました。工場のおかげで助かった人もいるはずです。ただ、自然を考える気持ちが足りませんでした。そのために、五十年以上たった今も、苦しむ人がいるのです。だから、ぼくたちは、未来のことを考えて自然を守っていく必要があります。
ぼくが大好きな昆虫を苦しめないために、ぼく自身ができることは、ボランティアです。そう考えて、ゴミを拾うボランティアに参加して、地域をきれいにしました。ぼくたち一人一人にできることは少ないけれど、小さなことでもできることをやっていけば、未来の自然は、今よりきっときれいになるはずです。
中学校の部
人間は……
板垣 陽菜さん(新潟大学附属新潟中学校2年)
昨年私は一つの決意を作文に書いた。新潟水俣病についてもっと知り、伝えると。それから環境と人間のふれあい館に何度か足を運んだり、新潟水俣病に関する資料や新聞記事を読んだりした。生の声をひしひしと感じる資料や映像から、読むたび観るたびに新たな学びを得ることができた。昨年の決意を実行に移すためにこの文章を書く。
「人間は怖い」新潟水俣病について学び、私は人間について考えさせられた。「人間は怖い動物です」環境と人間のふれあい館を訪れた時に読んだ言葉で、私の心に強く深く刺さった。約六十年前に起きた恐ろしく悲しい出来事は、被害者の方々の生活を一変させた。病気に苦しめられただけでなく、家族の関係を壊されてしまった人、差別で苦しめられた人。これほどひどい出来事を引き起こしてしまうなんて、人間はどうしてこんなに怖い生き物なのだろう。悲しさと怒りと悔しさの混じった何ともいえないため息が出た。
私は今までこのような公害などの話をきいても、どこか遠くの話のような気がしていた。「自分は大丈夫、関係ない」私は心のどこかで思ってしまっていた。これが人間の怖い部分なのだと思う。私は普段環境に気をつかっているつもりだが、食べ易いから……と過剰包装になっている商品をつい買ってしまうことがある。加害者になっていないつもりでも、私も少しずつ環境破壊をしている。普段の生活の中で「私の行動は間違っていないかな」とどんなことでも自分のこととして真剣に考えられないと、人は怖い生き物になってしまう。
「人間は強い」人間は人に力をくれる。私は学びを通して人々のパワーを強く感じた。被害者及び支援に加わった人々の強さに心を打たれた。被害者の方々はこれ以上被害を出さないために立ち上がった。弁護士、医師、家族や友人など多くの人々が被害者の支援に加わった。出口の見えないトンネルのような長い戦いに挑んだ人々のビデオなどを観て、私は胸が苦しくなった。私はこんな風に必死に生きているだろうか。人のために動いているだろうか。答えはノーだ。自分のために、目の前のことをこなしているだけだ。私も彼らのように人のために動ける人になりたい、もっと強く生きたい。そう思ったとき、私の中で一つの夢の花が咲いた。被害者の方々と支援をしている方々の心の強さが、私に夢を与えてくれた。私は追究することが大好きなので、将来は研究者になりたいと漠然と思っていた。具体的に何の研究をしたいかは、はっきりしていなかった。けれど、今回の学びを通して夢がはっきりした。病気の原因や治療方法を研究する、基礎医学研究者になりたいと思った。私には持病があるが、根本的な治療法はまだ無く情報も少ない。私のように困っている人がいるだろう。その人達のためにもっとこの病気を研究して役に立ちたい。人々の強さに私は夢をもらった。
「人間は変われる」阿賀野川の美しさを取り戻すために尽力した人がいる。水俣病が忘れられることがないように語り部として伝えている人がいる。被害を受けた人々や周りの人たちの努力の積み重ねによって、阿賀野川とその周辺の生活はほぼ本来の姿を取り戻した。最近ではSDGsという言葉をよく聞く。少しずつだが、地球にそして人に優しい世の中になってきている。そんな今私にできることは何だろう。新聞記事の中に、語り部の高齢化が進んできているので被害者の思いを代弁できる人が欲しいという声があった。私はまだ勉強不足だが、今後少しでも何かの役に立つことができるよう、学ぶ努力を続けたい。
人間は怖いけれど強い。優しい社会に向かって変わろう。安心して暮らせる毎日のために。
第23回新潟水俣環境賞作文コンクール
- 主催:新潟水俣病被害者の会、新潟水俣病阿賀野患者会
- 後援: 新潟県・県教育委員会、新潟市・新潟市教育委員会、阿賀野市・阿賀野市教育委員会、五泉市・ 五泉市教育委員会、阿賀町・阿賀町教育委員会、長岡市・長岡市教育委員会、上越市・上越市 教育委員会、三条市・三条市教育委員会、柏崎市・柏崎市教育委員会、新発田市・新発田市教 育委員会、小千谷市・小千谷市教育委員会、加茂市・加茂市教育委員会、十日町市・十日町市 教育委員会、見附市・見附市教育委員会、村上市・村上市教育委員会、燕市・燕市教育委員会、糸魚川市・糸魚川市教育委員会、妙高市・妙高市教育委員会、佐渡市・佐渡市教育委員会、魚沼市・魚沼市教育委員会、南魚沼市・南魚沼市教育委員会、胎内市・胎内市教育委員会、聖籠町・ 聖籠町教育委員会、弥彦村・弥彦村教育委員会、田上町・田上町教育委員会、出雲崎町・出雲 崎町教育委員会、湯沢町・湯沢町教育委員会、津南町・津南町教育委員会、刈羽村・刈羽村教 育委員会、関川村・関川村教育委員会、粟島浦村・粟島浦村教育委員会、新潟日報社、朝日新聞新潟総局、毎日新聞新潟支局、読売新聞新潟支局、産経新聞社新潟支局、日本経済新聞社新潟支局、NHK新潟放送局、BSN新潟放送、NST新潟総合テレビ、TeNYテレビ新潟、UX新潟テレビ21、エフエムラジオ新潟、FM KENTO、ラジオチャット・エフエム新津、エフエムしばた、FMゆきぐに 76.2、燕三条エフエム放送、FM-J エフエム上越、エフエム角田山ぽかぽかラジオ、エフエムとおかまち
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