イベント分野 ~ 流域の歴史を見つめ直す

イベント分野とは?

FM事業のイベント分野は3種類

「阿賀野川え~とこだプロジェクト」にて開催するイベント分野の個別事業は3種類あります。まず、1つ目は年1回開催してきた「パネル巡回展」、2つ目は年に複数回開催される「地域再発見講座・阿賀野川ものがたり」、3つ目はFM事業以外の事業と合同して、年度の締め括りとして開催される「流域再生フォーラム」。どの事業にも共通するテーマは、“阿賀野川流域に眠る歴史を見つめ直し、流域の未来に活かすこと”です。

こうしたイベントの場を通じて、自らが暮らす地域の歴史に向き合い、見つめ直す契機にしていただくと共に、日々の暮らしの中で忘却しつつある新潟水俣病についても、考えや思いを深める機会としていただけれぱ幸いです。

地域の歴史に向き合い、見つめ直す意味

ここでは、FM事業において、上記で紹介した様々なイベントを行う目的や意義などを紹介します。

地域再発見講座(第2回)「ハーモニカ長屋から眺めた風景~鹿瀬・昭和電工・阿賀野川」の様子

地域のアイデンティティを磨かないと、真の阿賀野川ブランドは育たない
地域の歴史を見つめ直さないと、地域のアイデンティティは磨かれない

丸三安田瓦工業㈱は、かつての象徴である平地窯の煙突を、使わなくなった今でも大切に保存している(阿賀野市庵地、撮影:山口冬人氏)

新潟水俣病の発生を境に失われていった流域の「人と人の絆」や「人と自然の関係」。その紡ぎ直しを目指す「阿賀野川え~とこだプロジェクト」では、新潟水俣病の記憶と教訓を流域の未来に活かす道を、地域に暮らす方々と共に模索していくことこそ、「真の阿賀野川ブランド」の確立につながると考えています。新潟水俣病に向き合い、それを乗り越えた末に確立された「阿賀野川ブランド」が冠してあれば、全国に向けて「阿賀の宝もん」を隠すことなく堂々と誇ることができるからです。

しかし、新潟水俣病の発生の有無に関わらず、こうしたブランドの確立にはそもそも、地域の文化や産業が、数々の時代の波に翻弄されつつも、先人たちの手でどのように育まれ、現在の姿に至ったかという歴史を、地域に暮らす人々自らが深く知り見つめ直すことが、まず必要になってきます。その上で、それを地域で生きていく証やそこで生業を営む拠り所にまで磨き上げられるか否かが、実は最も重要な鍵を握っています。なぜなら、地域がブランドとして認知されるということは、その地域が他者から評価されるということに他ならず、自分の独自性を生かし切れていない人が他人から評価されにくいのと同様に、アイデンティティーがない地域には持続可能なブランドが生まれにくいと考えられるからです。

忘れていた新潟水俣病に思いを馳せるきっかけに、
地域の人々と共に「もやい直し」を営んでいくきっかけに

そのため、自らの地域の歴史を見つめ直し、それを岐路に立たされた地域の未来を切り開くために活かす営みを、今後、流域に暮らす人々と共に地道に続けていけば、やがて全国の方々から阿賀野川流域の各地域が真に評価され始め、本物のブランドとして認知される日が来るのではないか。そうした観点から、FM事業では「パネル巡回展」「地域再発見講座・阿賀野川ものがたり」「流域再生フォーラム」などを開催して、まずは自らの地域を見つめ直す機会として皆さんに生かしていただければと考えています。

イベント開催に至るまでに、流域の様々な団体や人々と、数多くのロバダン!や打合せを行う(写真はギャラリー粘土工房ものがたりで丸三安田瓦工業㈱の関係者からレクチャーを受ける様子、撮影:山口冬人氏)

ところで、こうしたイベントの数々に参加されると、新潟水俣病という大きな公害を経験した阿賀野川流域だからこそ、その経験がどの地域の歴史にも何らかの形で刻み込まれ現在に至っている事実に気づかれるかと思います。したがって、日々の暮らしの中で忘却しつつある新潟水俣病の歴史や教訓などについても、こうしたイベントなどを通じて考えや思いを深める契機としていただければ幸いです。

それにも増して大切なことがもう一つあります。それは、こうしたイベントなどが開催に至るまでに、流域の様々な団体や人々と信頼関係を築きながら協働していけることです。ほとんどの団体や人々が、これまで「もやい直し」の動きとは無関係だったにも関わらず、FM事業が公害問題に端を発した地域再生の取組だと認識していただいた上で、それぞれの得意分野を生かした協力を頂戴しています。こうして、地域の方々と共に流域再生を無理せず営んでいく舞台裏の過程こそが、実は新潟版「もやい直し」の最大の成果だと言えるのかもしれません。