平成22年度 パネル巡回展

パネル巡回展について

★パネル巡回展「鹿瀬・昭和電工・阿賀野川~光と影を織りなしてきた歴史~」

明治から昭和にかけて、阿賀野川上流の歴史の中に刻み込まれた「近代化の光と影」を丹念に掘り起こしたパネル巡回展。上流域の自然資源の豊かさ、昭和電工躍進の様子、夏祭りで賑わう社宅の路地、高度成長期に訪れた時代の転換、公害が発生した顛末…など、パネルを観終わった後、上流地域を始め地方の現状とその未来に、ぜひ想いを馳せていただければ幸いです。

◆阿賀野川上流域で新潟水俣病などを題材としたパネル巡回展を開催!

FM事業では初めて、新潟水俣病などを題材としたパネル巡回展が、平成22年度に阿賀野川上流域で開催されました。
今回の展示作品は「鹿瀬・昭和電工・阿賀野川~光と影を織りなしてきた歴史~」前回のパネル巡回展では、上流域でも人気の高い地域資源「草倉銅山」の光と影の歴史をご覧いただきましたが、平成22年度はいよいよ、昭和電工㈱鹿瀬工場と企業城下町・鹿瀬がたどった光と影の歴史を取り上げます。

丹念に掘り起こされた光と影の歴史を眺めていくだけで、当時の鹿瀬を知る人々の懐かしい記憶とは裏腹に、実は現在に生きる私たちが今後の地域づくりや環境問題に活かせる貴重な教訓の数々が見つかります。そのため、とりわけ地元の方々にこそ、自らの地域の歴史を見つ直す機会としていただくため、本パネル巡回展は企画されました。

>>さらに詳しく:パネル作品「鹿瀬・昭和電工・阿賀野川~光と影を織りなしてきた歴史~」

展示会場のご紹介

◇上流域の旅館・ホテルなど延べ10施設が展示会場に!

2回目を迎えるFM事業のパネル巡回展では、下図のとおり上流域・阿賀町の旅館やホテルなどを中心に、最終的に前回を上回る延べ10施設が展示会場となり、流域内外の大勢の方々からご観覧いただくことができました。県外から来られた観覧者の中には、「観光地・宿泊地であれば隠したくなる過去を明らかにし、展示していることに感動した」との感想を持たれた方もいらっしゃいました。

なお、本巡回展から、通常サイズのパネル(A1サイズ:841mm×594mm)とは別に、一回り小さいミニサイズ(A2サイズ:594mm×420mm)のパネルも制作したことで、小規模な展示スペースしかない旅館・ホテルなどでも展示してもらうことが可能になりました。

角神温泉ホテル角神 かのせ温泉赤湯 御神楽温泉みかぐら荘
新三川温泉you&湯ホテルみかわ 三川温泉三川館
三川温泉叶屋旅館 御神楽温泉ブナの宿小会瀬 御神楽温泉みかぐら荘
麒麟山温泉雪つばきの宿古澤屋 三川温泉新かい荘

来場者の感想について

埋もれていた歴史の再確認・再発見

鹿瀬工場の労働者で混雑する朝の鹿瀬駅(昭和30年代)

  • 会場のパネルを見て、とても懐かしく感じた。もっと何か色々と掘り出せると思う。(60代・鹿瀬)
  • 東蒲原郡の光の部分・影の部分が良くわかった。埋もれている歴史を再発見してほしい。(50代・三条市)
  • 自分の親が働いていた場所でもある昭和電工の昔の姿を再確認できて大変良かった。(50代・三川)
  • 銅山が栄え電工売店も賑やかだったことは地元の人から聞いていたが、実際にこの目でパネル展示を見ると歴史がよくわかった。(60代・津川)

これまで語られなかった「光」の部分への想い

阿賀野川の豊富な水量を利用したダム式の鹿瀬発電所(撮影:山口冬人氏)

  • 水力を活かし、発展してきたこの地。これからはその豊かな自然環境を大々的に売り出し、発展させていってほしい。日本は資源のない国ではなく、ある意味資源国である。世界でこんなに「安全な美味しい水」が潤沢に飲めるのは日本だけだから。(30代・津川)
  • 昭和電工が多くの恵みをもたらしたことも事実だ。今後は阿賀町が環境の町として、様々な情報を発信していければ最良と考える。(50代・鹿瀬)
  • 昨今の情勢からは難しいかもしれないが、心のゆったりとした文化の発信地として自立できたら素晴らしいと思う。(60代・東京都)

公害被害の実態にもう少し踏み込んでは…

旧昭和電工㈱鹿瀬工場の現在の排水口(撮影:山口冬人氏)

  • 一つの産業史の表裏だけでなく、原因企業側や被害者側、新潟県や関係自治体などの行政側、これまでの報道関係者などの生の声も学びたい。(50代・新潟市)
  • 新潟水俣病問題は終わっておらず、被害者の苦しみは現在も続いている。そのことを描き出すことが、この展示では足りないのではないか。(60代・新潟市)
  • 下流域ではあまり話題にならない水俣病の差別問題。そのため、下流域の小中学校でもそうした実態を教えていくことが、未来への第一歩につながっていくと思う。(30代・新潟市)

これからの時代への想いや教訓

旧昭和電工㈱鹿瀬工場(※現在は関連会社の新潟昭和㈱、撮影:山口冬人氏)

  • 昭和電工は日本経済の発展・成長の時代の代表のような感じがした。その反面、流域の多くの人に公害の被害をもたらしたことを、今の中国の人に知ってもらいたいし、パネル展を中国でも行ってほしい。経済成長だけでなく、危険な公害が起きる恐れも知ってほしい。(60代・新潟市)
  • 私は「光」の立場にいた時代のことだった。しかしその影では水俣病で苦しむ人がいたことを知り、昔は戻せないし、どうすることもできないが、これから未来ある子どもたちのために、「環境」が光になってほしいと思う。(60代・三川)
  • 観光地・宿泊地であることを考えれば、むしろ隠してしまいたくなる過去であると思う。それを明らかにし、冊子まで作成して展示している姿に感動した。世はコンプライアンス、情報開示一色の時代であるが、この姿勢こそコンプライアンスの原点であろうと思う。今日、東北大地震の影響でこちらに宿泊した者だが、経営者(役員)として、これからの運営・経営を教えられたように感じる。様々なことが一度に身にふりかかって、一段と深く感じいったところです。ありがとう。(50代・福島県)